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北海道大学大学院工学研究科 「都市地域デザイン学研究室」の学生によるブログです。

2024.04.23
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2012.12.21
続いて、9月21日にはオーストリア南部、ハンガリーとの国境付近にあるギュッシングという地域を訪問しました。
これは、研究室の研究テーマの一つである「新エネルギーによる地域の自立」の先進事例としてヒアリングと現地調査のためです。
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この地域は1980年頃まで、産業が衰退しており、住民の7割は都心部に出稼ぎに出ていたほど疲弊した地域であり、オーストリアで最も貧しい地域と言われていました。
そこで、地域外へ流出していたエネルギーへの支出を抑え、地域内でエネルギーを生産・活用する事で、地域内で経済や資源を循環しながら、地域の産業や雇用を創出し、地域の活性化や地域の自立を目指す取り組みを始めました。

具体的な取り組みとしては・・・
ギュッシング市では、市内にバイオマスプラントを建設しました。周辺の木材加工端材や林地残材を原料とした木質バイオマスによる熱、電気、ガスの生産を行っています。
ここで生産された熱は、公共施設や一般家庭に接続した総延長35kmの地下配管によって地域熱供給され、市内熱使用量の95%が自給されています。
これと同時に、バイオマスプラントの近郊に木材関連の工場を50社も誘致し、安定的な原料供給と熱利用を行う仕組みを確立しました。
このような一連の取り組みによって、エネルギー産業や林産業の雇用を生み出し、地域への定住を促進しました。
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隣のウルバースドルフ村という人口300人の小さな村では、住民で共同組合を立ち上げ、地域の木材と太陽熱を原料とした熱生産を行い、地域熱供給を行っています。このエネルギー施設は組合に加入する住民で管理し、原料調達も住民が仕事や副業として行っています。
これにより、家庭の高熱費は圧倒的に安くなり、雇用も創出するなど、疲弊した集落に大きな効果をもたらしました。

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その隣のシュトーレン村では、酪農・畜産業の廃業によって広大に残された遊休農地を活用して、牧草や穀物を生産し、それを原料とバイオガスの生産をしたり、先と同様に林地残材などを原料とした熱を生産し、地域内に供給しています。
ここでも同様に雇用が創出されたり、家庭の光熱費の軽減につながるほか、遊休農地の効果によって環境保全にもつながっています。
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こういった各地域における一連の取り組みによって、今まで域外に流出していたエネルギーにかかる支出は、エネルギー売買などにより、収入源となり、地域の大きな産業として確立しています。地域資源を有効に活用し、地域のエネルギー源にするほか、それを産業として活用したり、既存産業の活性化を図ったりと多方面に効果をつなげようとしている様子がうかがえました。


このような取り組みのサポートやエネルギー技術の研究、コーディネートをする機関である、ヨーロッパエコエネルギーセンターの方に意見交換や現場見学のお世話をしていただきました。
英語でのヒアリングや説明に戸惑いながらも、たくさん学ばせていただきました。
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イニシャルコストの問題や技術の問題など多くの課題はあるようですが、地域資源から新たな価値を生み出す姿勢や、地域が一体となって、環境を保全し、エネルギーを共有する姿勢は大変参考になりました。
北海道でこのような取り組みがそのまま適応できるわけではありませんが、このような仕組みや姿勢を参考にしながら、北海道版新エネルギーの活用による地域の自立を今後も検討していきたいです。

修士2年 林原
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北海道大学大学院 工学研究科 都市地域デザイン学研究室
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